ピラティスの基本ポーズと動作の目的を初心者向けに解説
ピラティスを始めたものの、「ポーズで何を意識すればいいのかわからない」と感じる方は少なくありません。
ポーズの形を真似るだけでは、体幹への働きかけが起きにくく、続けても変化を感じにくくなります。
この記事では、ピラティスの考え方や代表的なポーズと目的、自宅で安全に実践するための環境づくりまでを解説します。

Director & Supervisor
全米ヨガアライアンス RYT200 / FTPマットピラティスインストラクター
ピラティスの動きに共通する考え方

ピラティスの動作は、ポーズの形よりも、どの部位をどのような状態に保ちながら動くかを重視します。
ここでは、すべての動作に共通する3つの考え方をご紹介します。
ニュートラルポジションの状態
ニュートラルポジションとは、骨盤と背骨が自然なカーブを保った状態のことです。
具体的には、仰向けに寝たとき腰の下にわずかな隙間ができ、骨盤が前にも後ろにも傾いていない位置を指します。
骨盤が前に傾きすぎると腰への負担が増し、後ろに傾きすぎると腹部の深層筋が働きにくくなるので、ニュートラルポジションから動作を始めることで、インナーマッスルに働きかけやすくなるのです。
しかし、最初はニュートラルポジションの感覚をつかみにくいでしょう。
その場合は、仰向けで両膝を立て、骨盤をゆっくり前後に傾けながら、どの位置が腰への圧迫感が少ないかを確かめることから始めてください。
左右の腰にある出っ張っている骨(腸骨)と恥骨を結んだ三角形が、寝ころんだ時に床と平行になっていればニュートラルな状態といえます。
呼吸と体幹を優先する動作
ピラティスでは、動作の難易度よりも、呼吸と体幹を優先します。
体幹とは、手足をのぞいた胴体部分のことで、深層部には正しい姿勢を保つために必要なインナーマッスルと呼ばれる筋肉があります。
インナーマッスルはからだの奥にあるため意識しづらいですが、呼吸によって働かしやすくなるため、呼吸と体幹の2つが崩れた状態でポーズの形だけを意識しても、体幹への働きかけが薄くなります。
呼吸で意識すべきなのは、吐くときに腹部を引き込む感覚を持つことです。
息を吐くたびにお腹の奥が自然に締まる感覚があれば、深層の腹筋群に働きかけているサインになります。
また、体幹は胴体すべてを含むため、腹部だけでなく背面の深層筋にも向けるとよいでしょう。
ピラティスのポーズ中に「背中が床から浮いていないか」「肩に余分な力が入っていないか」を確認する習慣をつけることで、表層の筋肉に頼らない動きが少しずつ身についていきます。
ヨガとピラティスは目的が異なる
ヨガは呼吸と意識を通じて心身を整える目的がありますが、ピラティスは骨格の配列と筋肉の動きを通じて身体機能を改善することが目的です。
動きの性質も違います。
ヨガはポーズをキープしながら伸展や弛緩を深める静的な要素が中心ですが、ピラティスは動きの中で体幹のコントロールを維持する動的な要素が中心です。
例えば、仰向けで足を上げる動作でも、ヨガは股関節の柔軟性を開いたり足の筋肉を伸ばしたりすることが主な目的ですが、ピラティスでは腹部の深層筋が骨盤を安定させながら脚を付け根から動かせているかが重要になります。
ヨガとピラティスの違いについての詳しい解説は、「ヨガとピラティスの違いは?目的別の選び方と効果を徹底比較」の記事をご覧ください。
初心者が最初に取り組む基本動作

ピラティスの基本動作は、難しい動きを習得するための土台となります。
ここでは、初心者が最初に取り組む代表的な動作と、それぞれの目的をご紹介します。
ハンドレッドとロールアップ
ハンドレッドは、ウォームアップのための動作です。
仰向けで両脚を斜め上に向かって伸ばし、頭と肩甲骨を床から持ち上げるようにしておなかを丸めた状態で両腕を前に伸ばします。その状態で呼吸に合わせて、両腕を小刻みに上下に動かす動きです。
この動作の目的は、腹部の深層筋を働かせながら、呼吸を安定させることです。
腕を動かしている間も腰が床から離れないよう、骨盤をニュートラルよりも後傾させ、腰の隙間をつぶした状態に保つことを優先しましょう。
ロールアップは、仰向けから上体をゆっくり起こし、前屈の位置まで背骨を一節ずつ動かす動作です。
腹筋の力だけで起き上がろうとすると勢いで動作することになるため、背骨を骨盤から順に床から剥がしていくイメージで動きましょう。
背骨の柔軟性と腹部のコントロール力の両方を確認できるので、どこかで動きが詰まる感覚があれば、その部位の柔軟性や筋力がないサインとして捉えられます。
レッグサークルとスパインストレッチ
レッグサークルは、仰向けで片脚を天井に向けて伸ばし、その脚で円を描くように動かします。
目的は、股関節の可動域を広げることですが、脚が動いている時に骨盤のニュートラルポジションが崩れないことが重要です。
脚の動きにつられて骨盤がぐらつくようであれば、体幹が脚の重みを支えきれていないことになります。
はじめは小さな動きからでいいので、骨盤が安定する範囲で動いてみましょう。
スパインストレッチは、長座の姿勢から背骨を前方へ湾曲させるように上体を倒していく動作です。
ハムストリングス(もも裏)のストレッチとして捉えられやすいですが、骨盤を垂直に立てた状態から、背骨を一つずつ動かすことを意識します。
股関節や内ももの柔軟性がない場合は、お尻の下にヨガブロックや折り畳んだブランケットを置いて座ることで、骨盤を立てた状態を保ちやすくなります。
動きが難しいときの負荷の下げ方
ピラティスの動作が難しく感じる原因の多くは、可動域が足りないか、体幹が動きを支えきれていないことです。
前者であれば動きの範囲を小さくし、後者であれば膝を曲げるなど、支点を身体に近づけることで負荷を下げられます。
例えば、ハンドレッドで腰が床から浮く場合は、膝を90度に曲げて脛と床を平行にした状態から始めます。
脚を低くするほど腹部にかかる負荷が増すため、腰の安定が確認できてから少しずつ角度を下げていくと取り組みやすくなるでしょう。
ロールアップで起き上がれない場合は、両手でヨガベルトを足裏にかけ、引っ張る力を補助として使う方法もあります。
姿勢・体幹改善に向けた中級の動作

基本動作で体幹の意識が定着してきたら、動きの難易度と複雑さが上がる中級の動作に取り組みましょう。
ここでは、姿勢と体幹の改善につながる代表的な動作をご紹介します。
サイドキックとスワン
サイドキックは、横向きに寝た姿勢で上側の脚を前後に動かす動作です。
股関節の可動域を広げる目的もありますが、横向きの姿勢で体幹が崩れないまま脚を動かす安定感を培います。
脚を前後に振るとき、骨盤が一緒に動く場合は、足を前後に動かすというよりも、付け根を折り曲げたり伸ばしたりするイメージで動かすと、骨盤を固定しやすくなります。
スワンは、うつ伏せから上体を持ち上げる後屈の動作です。
腕の力で押し上げるのではなく、背面の筋肉で背骨を伸展させることを目的としています。
胸椎(背骨の胸部にあたる部分)の柔軟性が低いと、腰椎だけで反ろうとして腰への負担が集中しやすいです。
そのため、おへそを縦に伸ばし、肋骨の下から胸の前面を開くイメージで動くとよいでしょう。
後屈とローリング
後屈系の動作は、スワンをさらに発展させたブリッジやスワンダイブなどが代表的です。
これらの動作では、背骨全体をひとくくりにして動かすのではなく、胸椎・腰椎・頸椎それぞれの部位を意識して動かすことが大切です。
ローリング系の動作には、ローリングバックやオープンレッグロッカーなどがあります。
背骨を丸めた状態で前後に転がるこれらの動作は、背骨の柔軟性だけでなく腹部のコントロールも必要です。
転がる際は勢いを使わず、背骨を均等に床に当てながらゆっくり転がす感覚で行いましょう。
また首への衝撃を避けるため、肩甲骨より上が床に触れないよう注意してください。
難易度を上げる前に確認すべき身体の状態
中級の動作に進む前に、以下の状態が整っているかを確認することで安全面に配慮できます。以下に確認項目をまとめましたのでご覧ください。
| 確認項目 | 基準となる状態 | 満たせていない場合 |
|---|---|---|
| 骨盤の安定 | レッグサークル中に骨盤が揺れない | 円の大きさを小さくして継続 |
| 呼吸の持続 | 動作中に呼吸が止まらない | 負荷を下げて呼吸を優先 |
| 頸部の負担 | ハンドレッド中に首が痛くならない | 頭を床に戻した状態で実施 |
| 腰への圧迫感 | 動作後に腰の張りが残らない | 基本動作に戻り体幹強化を優先 |
これらが整っている状態であれば、中級の動作に移行しても問題ないでしょう。
一方、不安定な項目がある場合は、基本動作の精度を高めることを優先してください。
自宅で安全に実践するための環境と道具

自宅でピラティスを継続するためには、動きやすい環境と適切な道具の選定が大切です。
ここでは、環境と道具の準備についてご紹介します。
マットとヨガローラーで土台を整える
ピラティスの動作は、仰向け・横向き・うつ伏せと床に接する姿勢が多く、背骨や骨盤が床に当たり続けるため、マットの厚みと安定感がポイントです。
ヨガマットの厚みは4〜6mm前後が標準ですが、ピラティスでは8〜10mm程度のものが骨盤や背骨への圧迫感を軽減しやすいです。
一方で、厚みが増すほどマットがたわみやすくなり、重心の微妙な変化を感じ取りにくくなる面もあります。
加えて、練習前にヨガローラーを使って、筋肉や内臓などの組織一つひとつを覆っている膜をほぐす筋膜リリースを取り入れると、可動域が広がり動作を深めやすくなります。
マットの選び方については「おすすめのヨガマットはどれ?自分にあった素材を見つけるコツ」をご覧ください。
自宅練習では補助道具を活用する
自宅でピラティスを練習する際、補助道具は動作の精度を上げるのに役立ちます。
以下に、代表的な補助道具とピラティスでの用途をまとめましたのでご覧ください。
| 道具 | 主な用途 | 選定のポイント |
|---|---|---|
| ヨガブロック | 骨盤の高さ調整・座位での安定 | 高さを3段階で調整できるもの |
| ヨガベルト | 脚裏へのストレッチ補助・可動域の拡張 | バックルの強度・コットン素材 |
| ピラティスボール | 体幹の安定・骨盤底筋(骨盤の底を支える筋群)への意識づけ | 直径20〜25cm程度の小型タイプ |
動きやすい練習スペースを整える
ピラティスの動作には、手足を大きく伸ばすものもあるため、マットの四方に腕や脚が伸ばせる余裕を作ることをおすすめします。
また自分のフォームを確認する環境も重要です。
鏡があれば横から骨盤の傾きや背骨の湾曲をチェックできますが、なければスマートフォンを横置きにして動画を撮ることで代用できます。
この他にも、室温と換気にも注意を払いましょう。
ピラティスは有酸素系の動作と静的なコントロール動作が混在するため、動き始めは涼しく感じても中盤以降は体温が上がりやすくなります。
エアコンや窓の開閉で室温を調整できる環境にすると、呼吸を一定に保ちながら動きやすくなるでしょう。
自宅での環境づくりの基本については、「ヨガを家で始める準備ガイド~スペース確保から道具選びまで」もあわせてご覧ください。
フォームが崩れるサインと動きを立て直す方法

自宅での練習では、フォームの乱れに自分で気付けるかが上達のカギです。
ここでは、フォームが崩れるサインの見つけ方と、動きを立て直す方法をご紹介します。
フォームの崩れに気づくことが上達を早める
ピラティスは、動作の回数を重ねることより、フォームの崩れに気づいて修正することが上達のカギとなります。
動作中に意識できるのは、呼吸が続いているか、ポーズに合った骨盤の傾きを保てているか、肩は下がっているか、の3つです。
もしいずれかができていないことに気付いたら動作を止め、一度ニュートラルポジションに戻しましょう。
その後、動作を最初からやり直すのではなく、今の場面でどこが崩れていたかを確認してから再開します。
例えば、足の上げ下げをする動きで、腰が床から浮きすぎていた場合は、脚の角度を高くして腹部への負荷を下げた状態で動作を再開します。
肩に力が入っていた場合は、肩甲骨を背中側へ引き下げ、おへそは床へ沈める意識を持ってから動き始めるなどです。
このように、崩れた原因を特定し、条件を変えて再挑戦することが、フォームの精度を少しずつ高めることにつながります。
スタジオと自宅で練習の役割を分ける
スタジオでは、インストラクターによる観察とフィードバックを通じて、自分では気づきにくいフォームのクセや左右差を把握できます。
その後、自宅練習ではスタジオで指摘された点を意識しながら反復練習すれば、効率よく上達できるでしょう。
「今日は骨盤の安定を確認したい」という具体的な課題を持ってスタジオに臨むことで、インストラクターへの質問も的確になり、吸収速度が高まります。
補助道具でフォームの感覚をつかむ
道具を使ったフォーム改善は、身体の内側だけでは把握しにくい、骨盤や背骨の位置を確認する方法として有効です。
例えば、ピラティスボールを両膝の間に挟んでハンドレッドを行うと、内ももと骨盤底筋への意識が生まれやすく、骨盤のポジションが揺れにくくなります。
ヨガベルトを足裏にかけてロールアップを補助することで、腹部の力だけで起き上がる感覚を段階的につかめるでしょう。
このように、補助道具を使ってフォームの感覚を体に覚えさせることで、道具を使わない場合でも動作精度が上がっていきます。
ピラティスの基本動作を身につける準備
ピラティスは、基本動作の目的を理解した上でスタジオ指導を受けると、上達のスピードが変わりやすくなります。
ニュートラルポジションの感覚、呼吸を止めない習慣、フォームの崩れに自分で気づく力、これらが自宅練習で育っていれば、スタジオでの指導をより深く吸収できるでしょう。
最初はポーズを軽減してもいいので、基本動作を丁寧に繰り返しながら、自分の身体のクセと向き合ってみてください。
オーエイチラボでは、ピラティスに必要なマットや補助道具を全国配送にてお届けしています。
スタジオへの一括導入やご相談も承っていますので、インストラクターの方もお気軽にお問い合わせください。
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監修
全米ヨガアライアンス RYT200 / FTPマットピラティスインストラクター
FRPファンクショナルローラーピラティス / ブリスベイビーマタニティーヨガインストラクター
「年齢を理由に諦めない、いつまでも自分の脚で歩ける体づくり」

