ピラティス特有の呼吸法の仕組みと身につけ方

ピラティスでは胸式呼吸を使うため、始めたばかりの方から「呼吸が難しくて動きに集中できない」という声を聞きます。

だからといって、胸式呼吸を習得できないまま練習を続けても、効果を実感しにくくなるでしょう。

そこで本記事では、ピラティス特有の呼吸の仕組みから、初心者でも身につけやすい段階的な練習方法までを解説します。

岡村真奈美

Director & Supervisor

岡村 真奈美
全米ヨガアライアンス RYT200 / FTPマットピラティスインストラクター

ピラティスの呼吸法と腹式呼吸との違い

ピラティスの動きは呼吸と連動させることで、効果を実感しやすくなりますが呼吸法の習得が必要です。

ここでは、胸式呼吸の考え方と、感覚のつかみ方をご紹介します。

ラテラルブリージングとは何か

ピラティスでは、胸に空気を取り込む胸式呼吸が基本です。

なかでも、おなかに軽く力を入れたまま、ろっ骨を左右に大きく広げるように息を吸う呼吸法を、ラテラルブリージング(胸式呼吸)と呼びます。

吐くときは、さらにおなかを引き込むようにして息を出し切ります。

この呼吸法は、体幹を安定させたまま呼吸を続けられる特徴があるため、体幹を固定した状態で行うピラティスに向いているのです。

なお、肩を持ち上げて息を吸う肩呼吸とは異なる動きのため、動作中に肩が上がっていないかを意識すると区別がつきやすくなります。

おなかに力を入れたまま呼吸する感覚をつかむコツ

座った状態でおへその下あたりに手を当て、軽くおなかをへこませたまま、鼻から息を吸ってみましょう。

このとき、おなかではなく、ろっ骨まわりが横に広がる感覚があれば、ラテラルブリージングに近づいているサインです。

息を吐くときは、骨盤の底にある骨盤底筋を軽く引き上げるイメージを持つと、インナーマッスルが連動して働きやすくなります。

最初はうまくできなくても、呼吸を深く続けながらおなかの奥に意識を向けるだけで、少しずつ感覚がつかめるようになるでしょう。

腹式呼吸との違いと使い分け

腹式呼吸と胸式呼吸は、目的が異なる呼吸法です。

腹式呼吸はおなかを大きく動かすことでリラックスした状態をつくりやすい呼吸法で、ヨガのポーズや就寝前の時間などで使われることが多いです。

一方、ピラティスの胸式呼吸は、体幹を固定したまま呼吸を続けられるため、動きながらでもおなかの安定を保ちたい場面に向いています。

例えば、腹筋を使う動作中に腹式呼吸をすると、おなかの力が抜けて体幹が不安定になりやすくなります。

リラックスを目的とするか、体幹を安定させながら動くことを目的とするかによって、呼吸法を使い分けましょう。

ヨガとピラティスの呼吸法の違いをさらに詳しく知りたい方は、『ヨガとピラティスの違いは?目的別の選び方と効果を徹底比較』もご覧ください。

呼吸が浅いと効果が出にくい理由と身体に起きる変化

ピラティスの呼吸法を覚えても、動きの中で活かせなければ効果を感じにくくなります。

ここでは、呼吸が浅いままだと効果が出にくい理由と、動作との連動が生む変化についてご紹介します。

インナーマッスルが使えない

インナーマッスルは、呼吸を深く続けることで働きやすくなる筋肉です。

浅い呼吸のまま動くと、深層の筋肉まで働きかけられず、インナーマッスルよりも表面のアウターマッスルに頼った動きになりやすくなります。

特に、腹筋を使うエクササイズで呼吸が浅くなると、おなかの表面だけに力が入り、体幹の奥が安定しないまま動作を続けることになります。

この状態が続くと、体幹を使っているつもりでも実感が得られにくく、練習を重ねても変化を感じにくくなるほか、ほかのアウターマッスルに負担がかかるため、腰痛につながるケースもあるのです。

また、おなかの深層にある腹横筋がうまく働かないと、内臓を支える力が弱まり、姿勢にも影響が出やすくなります。

そのため、動作中も呼吸を止めないことが、インナーマッスルを働かせる土台になります。

息を止めながら動いた時の影響

動作に集中すると、呼吸を止めたまま体を動かしてしまう方は少なくありません。

しかし体幹を固定する動きで息を止めると、おなかの内側にかかる圧力が急激に高まり、首や肩に余分な力が入りやすくなります。

また、呼吸が止まると次に息を吸うまでの間隔が空き、動きのリズムが乱れやすくなります。

このように、息を止めるクセは体の緊張とリズムの乱れにつながるため、動作中も呼吸を止めない意識が必要です。

呼吸と動作が連動したときに身体に起きる変化

呼吸と動作を連動させると、動きに合わせて力を入れるタイミングが揃いやすくなります。

具体的には、体を体を折り曲げたりおなかに負荷をかけたいときに息を吐くと、インナーマッスルを意識しやすくなり、体を反らせたり元の体勢に戻ってくるときに吸うと余分な力みが減りやすくなります。

また、呼吸のリズムが動作と揃うことで、練習後の疲労感が軽くなったと感じる方も多いです。

反対に、呼吸と動作がずれたまま練習を続けると、同じ動作でも余分な力みが残り、疲れやすさにつながることがあります。

胸式呼吸を身につける練習方法

胸式呼吸は感覚だけで覚えようとすると、時間がかかりやすい呼吸法です。

ここでは、初心者でも習得しやすい練習の進め方をご紹介します。

動作なしで呼吸だけを練習する

胸式呼吸は、動作と組み合わせる前に、呼吸だけで感覚をつかむと習得しやすくなります。

練習方法としては、椅子に座った姿勢で両手をろっ骨に当て、息を吸うときに手が左右に押し広がる感覚を繰り返し確認するのが効果的です。

この練習を1日数分行うことで、動作中も呼吸の感覚を保ちやすくなります。

慣れてきたら、吸う時間と吐く時間を同じ長さに揃える練習を加えると、呼吸のリズムがより安定しやすくなるでしょう。

簡単な動作と呼吸を組み合わせる練習

呼吸の感覚がつかめてきたら、次は簡単な動作と組み合わせる段階に進みます。

腕を軽く上げ下げする動作に合わせて、上げるときに息を吸い、下げるときに吐く練習から始めましょう。

慣れてきたら、動作の速度を少しずつ上げていくと、呼吸を保ったまま動ける範囲が広がっていきます。

途中で呼吸が乱れたと感じたら、動作を止めて呼吸だけの練習に一度戻ると、感覚を立て直しやすくなります。

スタジオと自宅での練習を使い分けて習得を早める

呼吸の習得は、スタジオでの練習と自宅での練習を使い分けると効率的です。

以下に、それぞれの練習で得やすいメリットをまとめましたのでご覧ください。

練習の場 得やすいメリット 向いている取り組み方
スタジオ インストラクターに呼吸のタイミングを直接確認できる レッスン中に感覚を確認しながら修正する
自宅 自分のペースで呼吸の練習を繰り返せる 短時間でも習慣として継続する

スタジオでは感覚の確認、自宅では反復練習というように役割を分けると、習得のスピードが上がりやすくなります。

どちらか一方だけを行うよりも、週に一度はスタジオで確認し、それ以外の日は自宅で短時間の反復練習を重ねるのが、無理なく続けやすい進め方です。

呼吸を妨げる胸郭のこわばりと整え方

呼吸の感覚をつかんでも、ろっ骨で囲まれた胸郭が硬いままでは呼吸が浅くなりがちです。

ここでは、呼吸を妨げる体のこわばりと整え方をご紹介します。

胸郭の硬さと姿勢が呼吸を妨げる

胸郭は、呼吸のたびに広がったり縮んだりすることで、肺に空気を出し入れする働きを担っています。

しかしデスクワークや猫背の姿勢が続くと、胸郭まわりの筋肉がこわばり、広がる動きが制限されやすくなります。

例えば、肩が内側に入り込む巻き肩の姿勢が続くと、肩甲骨まわりの筋肉に慢性的な緊張が生じ、胸郭を広げる動きがしにくくなるのです。

また、猫背の姿勢では胸郭の前面が縮んだ状態が続くため、息を大きく吸おうとしても広がる余地が少なくなります。

長時間座った姿勢が続く方ほど、こうした胸郭のこわばりが積み重なりやすい傾向があるでしょう。

こうした姿勢の崩れによる胸郭のこわばりは、呼吸の浅さとつながっているのです。

ヨガローラーとヨガホイールでこわばりをほぐす

胸郭まわりのこわばりは、道具を使ってほぐすことができます。

以下に、それぞれの道具で狙える部位と使い方をまとめましたのでご覧ください。

道具 狙える部位 使い方の目安
ヨガローラー 胸まわりの筋肉 仰向けで胸の下あたりに当て、ゆっくり圧をかけながらほぐす
ヨガホイール 背骨まわり・胸椎(背骨の胸の高さの部分) 仰向けで肩甲骨の間の背骨に添わせるように置き、腕を頭の先へ伸ばしながらゆっくり転がす

ヨガホイールを使う際は、体重の負荷がかかるため、耐荷重を確認してから使うようにしましょう。

胸まわりが硬く感じる方はヨガローラーから、背中の伸びにくさが気になる方はヨガホイールから試すと、体の状態に合わせて選びやすくなります。

なお、ヨガホイールの選び方について詳しくは『ヨガホイールでリフレッシュ!運動不足の体を優しく整える3つのポイント』もご覧ください。

呼吸の深さをろっ骨の動きでチェック

呼吸が深くなっているかどうかは、ろっ骨の動きを手で確認すると分かりやすくなります。

両手をろっ骨に当てて息を吸い、手のひらが押し広げられる感覚が弱いままであれば、胸郭のこわばりが残っている目安です。

このセルフチェックを練習の前後で行うと、こわばりがほぐれているかどうかの変化を確認しやすくなるでしょう。

毎回同じ姿勢・同じタイミングで確認すると、日によっての違いにも気づきやすくなります。

呼吸とともに深まるピラティスの実践

ピラティスの呼吸法は、ヨガの腹式呼吸とは仕組みが異なる胸式呼吸です。

呼吸だけを練習する段階から、動作と組み合わせる段階へと少しずつ進めることで、動きの質は変わっていきます。

また、胸郭のこわばりを整えることも、呼吸を深めるための助けになります。

呼吸を意識しながら練習を重ねることで、ピラティス本来の動きの深まりを感じやすくなるでしょう。

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岡村真奈美
岡村真奈美
監修

全米ヨガアライアンス RYT200 / FTPマットピラティスインストラクター
FRPファンクショナルローラーピラティス / ブリスベイビーマタニティーヨガインストラクター

「年齢を理由に諦めない、いつまでも自分の脚で歩ける体づくり」

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