ピラティスで自律神経を整える~意識できることと取り入れ方

「ピラティスをしたら眠くなった」「なんとなく体が軽くなった気がする」という体験をしたことがある方は少なくありません。

これには、ピラティス特有の胸式呼吸が、自律神経のバランスに働きかけることが関係しています。

この記事では、胸式呼吸が交感神経・副交感神経にどう影響するのか、レッスン後に眠くなる理由や時間帯ごとの取り入れ方までをお伝えします。

岡村真奈美

Director & Supervisor

岡村 真奈美
全米ヨガアライアンス RYT200 / FTPマットピラティスインストラクター

ピラティスの呼吸法と自律神経の関係

自律神経の乱れは、睡眠の質の低下や体のだるさとして現れます。

ここでは、ピラティスの呼吸法が自律神経にどう関わるかを解説します。

胸式呼吸と腹式呼吸の切り替えで自律神経を整える

ピラティスでは、肋骨まわりを左右に広げるように息を吸い、吐くときに肋骨を引き締めるラテラルブリージング(胸式呼吸)が基本で、腹部に力を入れたまま行います。

そのため、基本的には交感神経が優位になりやすい呼吸法です。

ここに、練習の終わりやクールダウン時にリラックス効果がある腹式呼吸を組み合わせることで、副交感神経が優位になりやすく、筋肉の緊張がゆるみ、体がリラックスモードへ移行しやすくなります。

1つのレッスンのなかで呼吸を使い分けることで自律神経が整いやすくなるのです。

背骨を動かすことで自律神経を整える

ピラティスでは、呼吸だけでなく背骨を大きく動かすエクササイズを多く行います。

自律神経のうち交感神経は背骨の両側を通っており、特に胸椎まわりの硬さや猫背姿勢は、胸郭の動きを制限して呼吸を浅くしやすくなります。

そのため、長時間のデスクワークやスマートフォン操作が続くと、胸椎が丸まった状態が続き、首や肩に力が入りやすくなり、体が常に緊張モードから抜け出しにくくなることがあるのです。

また、背骨を「丸める・反らす・ねじる・側屈する」といったさまざまな方向へ動かします。

こうした動きによって胸郭の可動域が広がると、呼吸が深く入りやすくなり、交感神経と副交感神経の切り替えも行いやすくなります。

胸式呼吸と腹式呼吸の目的と使い分け

胸式呼吸と腹式呼吸は、目的によって使い分けるものです。以下に両者の違いをまとめます。

胸式呼吸(ピラティス) 腹式呼吸(ヨガ等)
呼吸の動き 肋骨を左右に広げる おなかを膨らませる・へこませる
腹部の状態 力を入れたまま維持 力を抜いてゆるめる
主な目的 体幹の安定・動作との連動 リラックス・深いほぐし
自律神経への働き 整いやすくする 副交感神経を優位にする

ピラティスの胸式呼吸は、動作中に体幹を安定させながら呼吸を続ける点が、腹式呼吸とは異なります。

また、ピラティス中に腹式呼吸を取り入れようとすると体幹が不安定になりやすいため、目的に応じて使い分けることが大切です。

ピラティスで自律神経の乱れを整えられる範囲

自律神経の乱れは、長時間のデスクワーク・スマートフォンの使いすぎ・睡眠不足・慢性的なストレスなどが重なることで生じます。

交感神経が優位な状態が続くと、体は活動モードから抜け出せなくなり、休もうとしても休めない状態になるのです。

こうした状態でピラティスを取り入れると、呼吸の切り替えがしやすくなるほか、凝り固まって背骨もほぐせます。

具体的には、デスクワーク中に肩が上がって呼吸が浅くなっていることに気づけるようになる、就寝前に体の緊張を意図的にゆるめやすくなるなどです。

ただし、生活習慣の乱れや強いストレスが原因の場合、ピラティスだけで自律神経が整うわけではなく、睡眠・食事・休息との組み合わせも重要です。

ピラティスの後に感じる変化

ピラティスの練習後に「急に眠くなった」「お腹の調子が変わった気がする」と感じる方がいます。

ここでは、こうした変化が起きる理由を解説します。

レッスン後に眠くなる

ピラティスの練習中は、動作に合わせて吸う・吐くのリズムを繰り返し意識します。

とくに、レッスンの終わりには腹式呼吸に切り替わり、副交感神経が刺激されることから、体がリラックスモードへ切り替わりやすくなります。

この切り替えが起きると、筋肉の緊張がゆるみ、心拍数が落ち着き、眠気を感じやすくなるのです。

眠くなることは、体が緊張から解放されているサインなので、レッスン後に無理に活動しようとせず、体の変化を受け取る時間を設けることで、自律神経を整えやすくなります。

お腹の調子が変わる

ピラティスの動作では、おなかの深層にある腹横筋を意識しながら体幹を安定させますが、このとき腹部に適度な圧がかかり、腸管の周囲が動きやすくなります。

腸は腸管神経系と呼ばれる独自の神経ネットワークを持っており、自律神経とも連動しています。

これにより、副交感神経が優位になると腸の運動が活発になり、腸の働きが改善されたと感じることがあるのです。

また、便秘の改善を目的にピラティスを始める場合は、水分摂取や食生活との組み合わせが前提となります。

ストレスホルモンが抑えられ筋緊張がほぐれる

慢性的なストレスが続くと、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの分泌が高くなります。

その結果、筋肉が緊張しやすくなり、首・肩・腰まわりのこわばりとして現れるのです。

ピラティスでは、呼吸と動作を連動させながらインナーマッスルを優先的に動かすため、表層の過緊張がゆるみやすくなります。

また、動作に集中することで思考が一時的に整理され、精神的な緊張が和らぐ方も少なくありません。

これらの変化が重なることで、レッスン後に「体が軽くなった」「肩のこわばりが少し取れた」と感じられるのです。

ピラティスの効果と時間帯ごとの取り入れ方

ピラティスはいつ行うかによって、体への働きかけが変わります。

ここでは、就寝前を含めた時間帯別の取り入れ方を整理します。

就寝前に向く動きと避けた方がよい負荷の目安

就寝前に向くのは、呼吸のみに集中する練習や背骨をゆっくり動かすこと、仰向けで骨盤まわりをゆるめる動きなど、体をほぐせる動きです。

目安として、動作中に呼吸が乱れない程度の負荷にとどめましょう。

それとは反対に、汗をかくような動きや、体幹に強く負荷をかける動き(ハンドレッドや脚を高く上げるシリーズなど)は交感神経を刺激しやすく、就寝前に行うと寝つきが悪くなる場合があるので注意しましょう。

ピラティスを就寝前に取り入れる方法

就寝前にピラティスを取り入れる場合は、長い時間を確保する必要はなく、10〜15分程度の呼吸練習と軽いほぐし動作で十分です。

就寝の30〜60分前を目安に終えるようにすると、体温が落ち着いて眠りに入りやすくなります。

取り入れ方としては、入浴後に体がほぐれた状態でマットに座り、数回の胸式呼吸を行ってから動作に移るとよいでしょう。

毎日同じ流れで行うことが、自律神経のリズムを安定させるのに役立ちます。

就寝前のルーティン全般については、『ヨガで深くリラックス〜自宅を癒しの空間に変える休息術』もご覧ください。

朝・昼・夜で変わるピラティスの目的と適した強度

時間帯によってピラティスに期待できる働きが変わります。以下に目安をまとめました。

時間帯 主な目的 適した強度・動き
体を目覚めさせ、交感神経を適度に活性化する 中程度。体幹を使う動作を中心に
昼(休憩時間など) 姿勢の調整・集中力の回復 軽め。呼吸と背骨の動きを中心に
夜(就寝前) 副交感神経優位への切り替えを促す 低強度。ほぐし系の動きと呼吸練習に限定

朝のピラティスは体を活動モードに切り替える助けになりますが、起床直後は関節や筋肉の可動域が狭い状態です。

そのため、最初の数分は呼吸だけで体をほぐしてから動作に入ることをおすすめします。

昼は、交感神経が優位になっているため、強度が高い動きに向いている時間です。

デスクワーク中の姿勢の崩れを調整する目的で活用しやすいでしょう。

夜は呼吸でほぐすことを意識すると、就寝前の副交感神経優位への移行を妨げにくくなります。

ピラティスを習慣にするコツ

ピラティスで自律神経に働きかけるには、継続的な実践が重要です。

ここでは、生活に無理なく組み込みながら続けるコツを解説します。

週1回のペースでも続ける

体幹強化やボディメイクと異なり、自律神経を整えるために呼吸の切り替えを意識するため、毎週決まった曜日・時間に行うことで、体がリズムを学習しやすくなります。

月に数回まとめて行うよりも、週1回を安定して続ける方が効果が見込めるため、週1回を3か月続けるなどの目標を設定してみましょう。

スタジオとオンラインを使い分ける

スタジオレッスンとオンラインレッスンはそれぞれ役割が異なります。

スタジオでは、インストラクターによる呼吸と動作の確認が受けられるため、フォームの精度を高められます。

一方、オンラインレッスンは時間や場所の制約が少なく、週1回のスタジオ通いと組み合わせることで練習頻度を上げられるでしょう。

例えば、スタジオで学んだ呼吸の感覚をオンラインで復習すると、習慣として定着しやすいです。

どちらか一方に絞るのではなく、生活スケジュールに合わせて柔軟に組み合わせることが、長期的な継続を支えます。

ピラティス後に使えるプロップス

レッスン後のセルフケアを習慣にするには、道具選びも大事です。

ここでは、ピラティス後のほぐしに向くプロップスの特性と選び方を解説します。

ヨガローラーで筋緊張をほぐす

ピラティスのレッスン後は副交感神経が優位になりやすい状態です。

このタイミングでヨガローラーを使うと、筋膜のよじれや癒着がほぐれやすく、副交感神経が優位の状態を持続させやすくなります。

このとき、素早く転がすと刺激が強くなりすぎて交感神経が優位になりやすいため、一箇所につき10〜20秒程度かけてゆっくり自重を乗せるようにしましょう。

「気持ちよく圧がかかっている」と感じる程度の刺激にとどめることで、リラックスモードを崩さずにほぐしを続けられます。

背中・腰まわり・太もも裏・ふくらはぎの順に取り組むと、上半身から下半身へ流れるように緊張をゆるめやすくなります。

ローラーの硬さですが、初心者や筋緊張が強い方は、柔らかめのローラーから始めることをおすすめします。

ヨガローラーの詳しい使い方は、『ピラティスで腰痛を改善できる?基本動作と日常ケアの方法』もあわせてご覧ください。

リラックスに向くボルスター・ブランケット

ボルスターは、体の重みを預けて筋肉の力を抜くことを目的とした枕状のプロップスです。

仰向けで背中の下に置いたり、膝の下に入れたりすることで、体の各部位の余分な緊張をゆるめやすくなります。

選ぶ際は、中材の硬さと高さを確認し、仰向けに乗せたときに背骨が無理なく反らせる程度のやわらかさを目安にしましょう。

ヨガブランケットは、高さの微調整に活用できます。

ボルスターの下に折り畳んで重ねることで自分の体格に合わせた高さに調節でき、頭や膝の下に敷いて保温しながら使うことも可能です。

素材はコットン素材が肌に触れたときの感触がやわらかく、リラックスを妨げにくい傾向があります。

道具の組み合わせと管理

セルフケアを習慣にするうえで、道具の置き場所と動線の設計も意識すると続けやすくなります。

ポイントは、やろうと思ったときにすぐ始められる環境を整えることです。

具体的には、ヨガローラー・ボルスター・ブランケットをレッスン後すぐ取り出せる場所に出しておくだけで、行動のハードルが下がります。

組み合わせの一例として、レッスン後にヨガローラーで5〜10分ほぐしてから、ボルスターに体を預けて呼吸を整える流れが定着しやすいです。

道具の素材別の手入れ方法や選び方の詳細は、『ピラティスの効果とは?身体の変化が出るまでの期間と頻度』もあわせてご覧ください。

ピラティスで自律神経を整えるために

ピラティスで自律神経を整えるには、胸式呼吸を意識することが大切です。

吸う・吐くのリズムを動作と連動させることで、体が緊張と弛緩のメリハリをつかみやすくなり、レッスン後に眠くなる・体が軽くなるといった変化として現れるでしょう。

効果を感じるには、週1回でも同じリズムで続けることがポイントなので、回数より規則性を優先し、スタジオとオンラインを柔軟に組み合わせながら、レッスン後のほぐしをセットにすると習慣にできます。

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岡村真奈美
岡村真奈美
監修

全米ヨガアライアンス RYT200 / FTPマットピラティスインストラクター
FRPファンクショナルローラーピラティス / ブリスベイビーマタニティーヨガインストラクター

「年齢を理由に諦めない、いつまでも自分の脚で歩ける体づくり」

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